興味のあるテーマアンケートで要望の多かったパーキンソン病(PD)におけるアゴニストとMAO-B阻害薬の使い分けについて私見を交えながら述べたいと思います。
パーキンソン病診療ガイドライン2018を見ると初期治療としてL-dopaもしくはMAO-B/アゴニストと記載されております。初期治療はL-dopaなしで始めても良いのですが、診断的治療と効果の強さを考えると、L-dopa 100-200 mg/dayくらいでまずはじめてみることが多いと思います。
高齢ですとL-dopaのみというのも一つの考えですが、認知症のない方や若年では次にMAO-Bかアゴニストを追加する先生が多いと思います。ところがMAO-Bとアゴニストのどちらを使用すべきかについては、おそらく明確な指針はないので非専門の先生はここで悩むことが多いのではないかと思います。
結局はどちらからはじめても良いのですが、それぞれの特徴を知っておくとどちらを選ぶかの参考になると思います。以下のような特徴があるでしょう。
①長時間効果があり、効果もそれなりに強い
②ある程度の抗うつ作用など非運動症状の改善効果もある
③ICD(衝動制御障害)や幻覚など精神症状リスクがある
④非麦角系は突発性睡眠で運転禁止、麦角系は弁膜症リスクあり心エコーフォロー必要
①長時間効果があるが、効果はそれほど強くない
②ある程度の抗うつ作用など非運動症状の改善効果もある
③SSRIが使用できない
④進行抑制作用があるかもしれない
⑤ジスキネジア、幻覚などのリスク
例えば若年PDでは車の運転希望が多い、衝動制御障害リスクが高い、少しでも進行抑制作用に期待したいといったことから私はMAO-Bを早めに入れています。ただし、値段が高いので本人が許容できない場合は不適当と思います。
MAO-BはL-dopa換算ではせいぜい100mgとこれだけで乗り切れる期間は短いので、L-dopa 200 mg+MAO-Bでしばらく粘り、wearing offが出てきたところで結局はアゴニストを追加することになるでしょう。L-dopa 300 mgくらいに増やしますが、その後はアゴニストの量を増やしながらL-dopaの量を節約して運動合併症の発現を遅らせたいです。これも治療歴が長くなって来ればアゴニストだけでは足りないので、L-dopaを5,6回内服と増やさざるを得ないのでバランス良く増やします。
なお、アゴニストは1剤での使用が基本だと考えています。2剤以上を高容量で使用してICDや幻覚など認める場合、進行期に脳深部刺激療法(DBS)の適応を考えるときに悩むケースが多いように思います。
長くなってしまったので続きは今度にしようと思います…。
本テーマは会員の先生方から要望が多かったテーマでした。興味のあるテーマは事務局より随時募集中のようですので、以下のフォームに記載ください。
