日頃より頭痛で悩んでいる人は多いですが、頭痛の診断を受けていないがために適切な治療を受けてない場合が多いです。近年、片頭痛領域では画期的な治療薬が出現し、頭痛診療も大きく変化しつつあります。今後益々正確な頭痛診断のもとに適切な治療を受けることが求められるようになってきます。
日本における片頭痛患者のうち、医療機関を受診しているのは約6割に満たず、さらに急性期治療薬トリプタンを使用したことのある人は15％、予防薬の使用率は1割未満と極めて低いことが知られています。適切な治療が行き届いていない現状を改善するには、まず「一次性頭痛」と「二次性頭痛」を正確に鑑別し、片頭痛を的確に診断することが出発点と考えます。
<h2>頭痛の分類</h2>
一次性頭痛には片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛などがあります。二次性頭痛には脳腫瘍やクモ膜下出血などがあり、外傷、血管障害、感染症など器質的要因を伴います。二次性を見逃すことは致命的な結果を招くため、特に初診時には注意が必要です。片頭痛の典型像は、拍動性で中等度以上の痛みを伴い、体動で増悪し、光・音・匂いへの過敏を伴います。発作は4〜72時間続き、月15日以上で3か月以上続くものを「慢性片頭痛」と呼び、反復性片頭痛の段階で適切に介入し、慢性化を防ぐことが治療の鍵になります。
<h2>頭痛治療</h2>
急性期治療では、トリプタン製剤が第一選択であり、頭痛発現から30分〜1時間以内の服薬が最も効果的です。服用タイミングが遅れたり、逆に前兆期に服用すると効果が半減するため、患者教育が不可欠です。新しい急性期薬としてはセロトニン5-HT1F受容体作動薬であるラスミジタン（レイボー）が登場しています。血管収縮作用を持たないため、従来トリプタンが禁忌であった脳・心血管疾患既往のある患者にも使用できる点が利点です。副作用として眠気やめまいがあり、日中の使用には注意が必要ですが、効果発現が速くトリプタンに匹敵します。
トリプタン製剤の副作用にも、眠気やめまい、倦怠感がみられることがありますが、これらはビタミンE製剤の併用で軽減できる可能性があり、試してみる価値のある手法と考えています。
<h2>予防療法と最新トピックス</h2>
予防治療については、従来薬としては抗てんかん薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、抗うつ薬などがあります。近年使用でき、最も効果の高い薬剤がCGRP関連製剤であり、片頭痛発作日数を顕著に減らすことが明らかになっています。日本でもフレマネズマブやガルカネズマブなどが月1回皮下注射で使用可能となり、今後は経口CGRP受容体拮抗薬（ゲパント系薬）の登場が期待されています。これらは血管収縮を起こさず、副作用も少なく、薬物乱用頭痛を起こしにくい点で画期的な薬剤です。今後はこういった新規薬の使い分けや長期安全性、いつまで継続するべきかなどが課題となってくると考えられます。
片頭痛は発作時のみならず、発作間欠期にも生活の質を損なう疾患です。うつ傾向や不安症を合併する例も多く、CGRP抗体製剤はそうした精神症状の改善効果も報告されています。今後の頭痛診療では、薬物療法と生活指導を組み合わせ、個々の患者に最適な治療計画を立てることが求められます。
<h2>まとめ</h2>
頭痛の診断においては、まず一次性頭痛と二次性頭痛の鑑別をしっかりと行うことが非常に重要です。その上で、片頭痛では適切な急性期治療薬を選択して適切なタイミングで投与することが大切です。また既存の予防薬で効果がない場合は、CGRP抗体関連薬剤の使用を検討することが有用です。
 
&lt;h3&gt;以下Medixpost事務局より&lt;/h3&gt;
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