地方都市の中核病院でgeneral neurologistとしてcommon disease中心に幅広く診療しております。
特に脳梗塞の病型診断および内科的治療（生活習慣病管理を含む），予防に力を入れております。

<h2>はじめに</h2>
<p>前回は，各薬剤とワルファリンを比較した大規模臨床試験（RCT）について紹介させて頂きました．</p>
<p>https://www.medixpost.jp/articles/523b89ed-2a79-4b1c-b4aa-61049cb95629</p>
<p>今回は，DOACに関するデータベースを用いたコホート研究のうち，DOAC同士を比較したものを紹介させて頂きます．</p>
<h2>Direct Comparison of Dabigatran, Rivaroxaban, and Apixaban for Effectiveness and Safety in Nonvalvular Atrial Fibrillation</h2>
<p>PA Noseworthy, et al. Chest. 2016; 150(6):1302-1312.</p>
<p>アメリカのデータベースを用いて行われた，ダビガトラン，リバーロキサバン，アピキサバンの3剤いずれかを使用していた非弁膜症性心房細動（Non Valvular Atrial Fibrillation：NVAF）患者を対象としたコホート研究となります．</p>
<p>有効性（脳卒中または全身性塞栓症の発現率）については，3剤間で有意な差はありませんでした．</p>
<p>安全性については，アピキサバン群で大出血の発現率が低下しておりました（vs ダビガトラン：ハザード比 0.50 [95％CI 0.36-0.70；P＜0.001]，vs リバーロキサバン：ハザード比 0.39 [95％CI 0.28-0.54；P＜0.001]）．また，リバーロキサバン群は，ダビガトラン群と比較して，大出血，頭蓋内出血の発現率が上昇しておりました（大出血：ハザード比 1.30 [95％CI 1.10-1.53；P＜0.01]，頭蓋内出血：ハザード比 1.79 [95％CI 1.12-2.86；P＜0.05]）．</p>
<h2>Direct comparisons of effectiveness and safety of treatment with Apixaban, Dabigatran and Rivaroxaban in atrial fibrillation</h2>
<p>M Jansson, et al. Thromb Res. 2020; 185: 135-141.</p>
<p>スウェーデンのレジストリを用いて行われた，新規にダビガトラン，リバーロキサバン，アピキサバンの3剤いずれかを開始したNVAF患者が対象のコホート研究となります．</p>
<p>安全性に関しては，標準用量では，アピキサバン群およびダビガトラン群は，リバーロキサバン群よりも大出血の発現率が低いという結果となりました（アピキサバン vs リバーロキサバン：ハザード比 0.69 [95％CI 0.54-0.88]，ダビガトラン vs リバーロキサバン：ハザード比 0.64 [95％CI 0.48-0.87]）．減量用量では，アピキサバン群はダビガトラン群，リバーロキサバン群より大出血の発現率が低くなりました（アピキサバン vs ダビガトラン ハザード比 0.62 [95％CI 0.44-0.88]，アピキサバン vs リバーロキサバン：ハザード比 0.45 [95％CI 0.33-0.61]）．</p>
<p>有効性には有意な差はありませんでした．</p>
<h2>Association of Rivaroxaban vs Apixaban With Major Ischemic or Hemorrhagic Events in Patients With Atrial Fibrillation</h2>
<p>WA Ray, et al. JAMA. 2021; 326(23): 2395-2404.</p>
<p>アメリカのメディケア受給者のデータを用いて行われた，リバーロキサバンまたはアピキサバンを新規に開始された65歳以上の心房細動患者を4年間観察して2剤の有効性および安全性を比較した後ろ向き研究になります．</p>
<p>虚血性イベント(脳梗塞/全身性塞栓症)と出血性イベント(脳出血/他の頭蓋内出血/致死的頭蓋外出血)を合わせた複合アウトカムの発現率を主要アウトカムとしておりますが，16.1/1000人年（リバーロキサバン群）vs 13.4/1000人年（アピキサバン群）（リスク差 2.7/1000人年 [95%CI 1.9-3.5]；ハザード比 1.18 [95%CI 1.12-1.24]）とリバーロキサバン群で有意にイベントが多いという結果でした．</p>
<p>主要アウトカムの発現率を虚血・出血別にみた結果では，虚血性イベント，出血性イベント，双方ともリバーロキサバン群で多くみられました（虚血性イベント：8.6 vs 7.6/1000人年，リスク差 1.1/1000人年 [95%CI 0.5-1.7]，ハザード比 1.12 [95%CI 1.04-1.20]，出血性イベント：7.5 vs 5.9/1000人年，リスク差 1.6/1000人年 [95%CI 1.1-2.1]，ハザード比 1.26 [95%CI 1.16-1.36]）．致死的頭蓋外出血もリバーロキサバン群で多かった（1.4 vs 1.0/1000人年；リスク差 0.4 [95%CI 0.2-0.7]；ハザード比 1.41 [95%CI 1.18-1.70]）．</p>
<p>副次的アウトカムである非致死的頭蓋外出血は39.7 vs 18.5/1000人年（リスク差 21.1 [95%CI 20.0-22.3]，ハザード比 2.07 [95%CI 1.99-2.15]），総死亡は44.2 vs 41.0/1000人年（リスク差 3.1 [95%CI 1.8-4.5]，ハザード比 1.06 [95%CI 1.02-1.09]）といずれもリバーロキサバン群で有意に多いという結果でした．</p>
<p>また，リバーロキサバン群においては，標準用量でも減量用量でも主要アウトカム（虚血性イベント＋出血性イベント）が多く見られました（標準用量：13.2 vs 11.4/1000人年（リスク差 1.8 [95%CI 1.0-2.6]，ハザード比 1.13 [95%CI 1.06-1.21]，減量用量：27.4 vs 21.0/1000人年（リスク差 6.4 [95%CI 4.1-8.7]，ハザード比 1.28 [95%CI 1.16-1.40]）．</p>
<h2>Comparative Effectiveness and Safety Between Apixaban, Dabigatran, Edoxaban, and Rivaroxaban Among Patients With Atrial Fibrillation : A Multinational Population-Based Cohort Study</h2>
<p>Lau WCY, et al. Ann Intern Med. 2022; 175(11): 1515-1524.</p>
<p>フランス・ドイツ・イギリス・アメリカの標準化されたデータベースを用いて行われた，DOAC内服中の心房細動患者における有効性・安全性を各DOACで比較したコホート研究になります．</p>
<p>アピキサバンは，ダビガトラン，エドキサバン，リバーロキサバンと比較して消化管出血の頻度が少ないという結果でした（アピキサバン vs ダビガトラン：ハザード比 0.81 [95％CI 0.70-0.94]，アピキサバン vs エドキサバン：同 0.77 [95％CI 0.66-0.91]，アピキサバンvsリバーロキサバン：同 0.72 [95％CI 0.66-0.79]）．</p>
<p>その他のアウトカム（虚血性脳卒中や全身性塞栓症，頭蓋内出血，全死亡率）やその他のDOAC同士の比較では，有意差はみられませんでした．</p>
<p>80歳以上の患者においても，アピキサバンはリバーロキサバンよりも消化管出血の発現率が低下しておりました．</p>
<p>また，標準用量（ハザード比 0.72 [95％CI 0.64-0.82]），減量投与（ハザード比 0.68 [95％CI 0.61-0.77]），慢性腎臓病患者（ハザード比 0.68 [95％CI 0.59-0.77]）においても同様の結果でした．</p>
<h2>Long-term comparative effectiveness and safety of dabigatran, rivaroxaban, apixaban and edoxaban in patients with atrial fibrillation: A nationwide cohort study</h2>
<p>Grymonprez M, et al. Front Pharmacol. 2023; 14: 1125576</p>
<p>経口抗凝固薬（ワルファリンも含む5剤）を新規に導入した心房細動患者において，各経口抗凝固薬の有効性・安全性を比較したベルギーの国内データを用いたコホート研究になります．</p>
<p>脳卒中や全身性塞栓症の発生率は同程度でしたが，ダビガトランとアピキサバンは，リバーロキサバンやエドキサバンと比較して，大出血または臨床的に重要な出血イベントの発現率が有意に低いという結果でした（ダビガトラン vs リバーロキサバン：ハザード比 0.86 [95%CI 0.83-0.90]，アピキサバン vs リバーロキサバン：同 0.86 [95%CI 0.83-0.89]，ダビガトラン vs エドキサバン：同 0.91 [95%CI 0.83-0.89]，アピキサバン vs エドキサバン：同 0.86 [95%CI 0.81-0.91]）．</p>
<p>また，アピキサバンはダビガトランやエドキサバンと比較して大出血の発現率が有意に低いという結果でした（アピキサバン vs ダビガトラン：ハザード比 0.86 [95％CI 0.80-0.92]，アピキサバン vs エドキサバン：同 0.79 [95％CI 0.72-0.86]）．</p>
<h2>まとめ</h2>
<p>DOAC同士を比較したコホート研究を5つ紹介させて頂きました．</p>
<p>今回紹介した研究では，安全性（出血性イベント）についてはアピキサバンが優れていたという結果となり，有効性についてはWA Rayらの報告においてのみアピキサバンがリバーロキサバンよりも優れていたという結果となり，その他の試験では有効性には有意な差はみられなかったという結果でした．</p>
<p>無作為化比較対照試験ではないためにエビデンスレベルとしてはやや下がりますが，参考になれば幸いです．</p>

4つのDOACの使い分け② 〜データベースを用いたコホート研究（DOAC同士の比較）〜

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